書類とハンコだけでは、人の心は動かせない
昨年(2024年)5月より、ベトナムにおける森林由来のカーボンクレジット創出プロジェクトを進めてまいりました。
しかし、その過程で直面したのは「技術的な問題」や「競合他社」といった分かりやすい壁ではなく、
むしろ「弁護士」「制度」「仕組み」といった、目には見えにくいけれども極めて厚い壁でした。
私は当初、専門家である弁護士の先生方に相談を重ねました。
最初は一人、二人と話を伺いましたが、返ってくる答えはほとんど同じ。
「難しいですね」「前例がありません」と。
気づけば40名近くの弁護士の先生方にご相談しましたが、答えは大きく変わりませんでした。
その時、はっと気づいたのです。
本当の壁は制度そのものではなく、「制度を動かす人間の感情」にあるのだと。
「前例がありません」という言葉の裏には、「面倒を避けたい」「責任を負いたくない」「失敗したくない」という、人間らしい感情が隠れていることを知りました。
役所とのやり取りでも同じでした。
最初は大量の書類を提出し、丁寧に説明を繰り返しましたが、進展はほとんどなく「規則なので」という一点張り。
ビジネスの現場がスピードを重視する一方で、行政の時間はゆったりと流れている。
そのすれ違いに苦しみました。
しかし、ある時から私はアプローチを変えました。
書類や制度の話をする前に、「なぜ自分がこれを実現したいのか」を伝えるようにしたのです。
子どもの頃に見た夢、起業して失敗した経験、そして「この仕組みができれば、どれだけ多くの人の笑顔を生み出せるのか」。
そうした個人的な想いを率直に語りました。
すると、担当者の表情が少しずつ変わっていきました。
彼らも一人の人間であり、「誰かを助けたい」「世の中を良くしたい」という気持ちを確かに持っているのです。ただ、分厚い制度の壁の中で、その気持ちを忘れてしまっていただけでした。
私は確信しました。
書類や理屈だけでは人は動かない。
本気の想いや情熱こそが、人の心を動かすのだと。
制度や法律は「ゲームのルール」に似ています。
もちろんルールを守るのは当然ですが、本当に大切なのは、そのルールをどう使いこなし、どう未来を切り開いていくかです。時にはルールの隙間を突くような工夫が必要なこともあるでしょう。
「前例がない」からこそ挑戦する価値がある。
私はこれからも、弁護士にNOと言われるようなことや、役所が難色を示すようなことでも、人々がワクワクする未来に向けて挑戦を続けていきます。
いま、まさに新しい「前例のない」アイデアを実現するためのチームを作ろうとしています。
もしこの記事を読んで、「自分も想いで世界を動かしたい」と感じてくださった方がいたら、ぜひ声をかけていただきたいです。
一緒に、書類とハンコだけでは決して生まれない、人間らしい温度を持った未来をつくっていきましょう。