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「ベトナムが金融ハブを目指す」──その言葉の重みが、変わった日

最近、世界の経済構造が静かに、しかし確実に変わり始めていると感じる場面が増えました。
その中で耳にしたのが、「ベトナムが本気で金融ハブを目指している」という話です。

正直に言えば、最初は半信半疑でした。
ベトナムの経済発展を現場で見てきましたが、金融市場に関しては、まだ制度面・人材面ともに課題が多いのが現実です。

しかし、今回のニュースを目にしたとき、その認識は大きく揺さぶられました。

ホーチミン市とNasdaqの提携が示す「本気度」

2025年10月17日、ホーチミン市はニューヨークで、世界有数の証券取引所であるNasdaqと戦略的パートナーシップを締結しました。
しかも、タイムズスクエアには祝賀ボードが掲げられています。

これは単なる象徴的なイベントではありません。
「世界に向けて本気で宣言した」という意味を持つ出来事だと、私は受け取りました。

今回の提携で明らかになった重要ポイント

① 提携の中核
ホーチミン市財政局とNasdaqは、国際金融センターの開発に向けた戦略的協力覚書を締結しました。
対象は、ガバナンス構築、人材育成、クロスリスティング(相互上場)、金融商品開発など多岐にわたります。

② Nasdaqからの具体的な支援
証券・債券・デリバティブに加え、デジタル資産やカーボンクレジット市場における人材育成まで含まれています。
さらに、ベトナムと米国、国際金融コミュニティを結ぶネットワーク構築も視野に入れています。

③ 実行体制
共同作業グループを設置し、年2回以上の定期会議を実施。
将来的には、国際金融センター運営機関が中核となり、継続的に取り組む体制です。

「Nasdaqと組む」という意味

Nasdaqには、Apple、Microsoft、Google、Amazon、Tesla、Metaといった世界を代表する企業が上場しています。
世界初の電子証券取引所として、資金調達、成長支援、技術提供において圧倒的な実績を持つ存在です。

そのNasdaqが、ベトナムと長期的な協力関係を結ぶ。
これは「期待」ではなく、「現実的な可能性」を見据えた判断だと感じています。

数字が語る、ベトナム政府の覚悟

2025年6月27日、ベトナム国会はホーチミン市とダナンに国際金融センターを設立する決議を可決しました。

政府の目標は明確です。
「今年中に運用開始、5年以内に完成」

現在、ホーチミン市の世界金融センター指数(GFCI)は95位。
一方、ニューヨークは1位です。

この差は確かに大きい。
しかし私は、この数字を「遅れ」ではなく、「余白」と捉えています。

ハノイから見たホーチミン構想の意味

私はハノイ在住です。
正直に言えば、「ホーチミンばかり注目されているな」と思うこともあります。

それでも、この構想はベトナム全体にとって極めて前向きです。

南部が金融、北部が製造とテック。
この役割分担が明確になれば、資金調達の円滑化により、ハノイ周辺の工業団地や日系・韓国系企業にも大きな恩恵が生まれます。

都市間競争ではなく、都市間連携。
それが今、ベトナムで静かに始まろうとしています。

投資家として見逃せない視点

この金融センター構想は、「短期的な利益」を狙う話ではありません。
制度、人材、信頼が積み重なって初めて価値が生まれる、長期戦です。

だからこそ、
・どの分野に人材育成が行われるのか
・どの市場が優先的に整備されるのか
・国際基準がどこまで導入されるのか

こうした点を冷静に、継続的に見ていく必要があります。

私自身の確信と、これから

私は、経済の発展とは「数字の成長」ではなく、「選択の質」だと考えています。
誰と組み、どの未来を目指すのか。

今回のNasdaqとの提携は、ベトナムがその問いに対して、はっきりと答え始めた瞬間でした。

すぐに世界トップになることはないでしょう。
しかし、「本気でそこを目指している国」に変わった。

それだけで、未来は大きく動き始めます。

この変化を、ただのニュースで終わらせず、
どう関わり、どう活かすか。

私はこれからも、現場で考え、対話し続けたいと思います。
この時代の転換点を、共に見届ける仲間として。

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