ベトナムに訪れる“転換の時”──国内炭素取引所と、民間の果たすべき役割

最近、私たちは世界の環境・経済システムが、静かにしかし確実に形を変えていく瞬間を目の当たりにしているように感じます。
温暖化対策は「取り組むべき理想」から、「企業の存続条件」へと変わりました。
そして今、アジアの中でも特にベトナムが、その新たな潮流の中心に立とうとしています。
皆さんは、この変化をどのように受け止めているでしょうか。
■ 背景と課題──制度は整いつつあるが、まだ“骨格”の段階
ベトナム政府は 2025年8月から国内炭素取引所の運用を開始する予定です。この取引所は、炭素排出量を「見える化」し、排出削減を価値として取引する仕組みの中核を担う存在になります。
さらに 2028年末まで市場整備を進め、2029年には排出枠のオークション制度の導入も計画されています。
しかし、現状はまだ制度の枠組み・支援策が完全に整っているとは言えません。
それでも、民間事業者の間では確かな動きが始まっています。
農業由来のカーボンクレジット創出への挑戦、JCM(二国間クレジット制度)に関するセミナー開催——。
市場はまだ未整備であるにもかかわらず、未来を見据えた挑戦者たちはすでに動き始めています。
▼引用元
「JBIC現地セミナー:カーボンクレジット創出・森林保全・JCM制度」
https://www.jbic.go.jp/ja/information/image/202509_seminar.pdf
■ 私が信じていること──“準備する者”が未来を切り拓く
私自身、この課題に向き合う中で強く感じていることがあります。
それは 「制度が完成してから動くのでは遅い」ということです。
ひとつの市場が立ち上がる時、最初に価値を掴むのは、
準備を怠らず、制度の形が整う前から実践を積み重ねた人々です。
私はベトナム各地を訪れ、森林プロジェクトに携わる多くの方々と話してきました。
制度が未完成である状態は、確かに不安とリスクを伴います。
しかしそれ以上に、試行錯誤を繰り返しながら未来の基盤を築いている──その手応えと熱量を、私は何度も感じてきました。
私が信じているのは、
「外側から批評する人ではなく、内側で汗を流す人が、未来を動かす」という現実です。
市場形成の最初の一歩に関わる機会は、そう多くありません。
まさに今、ベトナムにその“入口”が開かれようとしています。
■ 私たちのビジョンと行動──透明性・現場・長期視点
では、私たちは何をするべきか。
私自身が掲げているアプローチは、以下の3つです。
現場の進捗をデータで可視化し、信頼性を高める
植林・保全・測量などの活動を数値・映像で継続して共有し、
「見えないリスク」を極力排除します。
制度が整う前から、国際基準でプロジェクトを積み上げる
VER/VCS、JCM対応、MRV体制の構築など、
将来の認証・市場接続を意識したプロジェクト設計を行います。
短期的な利益ではなく、長期的な価値蓄積を最優先にする
市場の波に振り回されず、5年・10年後に価値を生む仕組み作りに注力します。
制度はこれから整備されます。
ですが、今の段階でも 「信頼できるプロジェクトを積み上げること」 は可能です。
未来の市場は、今日の積み重ねによってしか形成されません。
■ 最後に──未来は待つ者ではなく、向き合う者の手に
制度が完全に整う日を待っていたら、その頃には“市場の扉”は半分閉じています。
私たちは今、その扉が開きつつある瞬間に立ち会っています。
だからこそ私は、挑戦し続けたいと思います。
「ベトナムで、森林由来のカーボンクレジットを未来の産業へ。」
この信念は揺らぎません。
そして、もしこの記事を読んで
胸のどこかが “静かに熱くなる” 感覚を覚えてくださった方がいるなら、
私はその方とこれからの未来について語り合いたいと強く思います。

