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脱炭素は理想論では終わらせない──JCMが切り拓く次の10年

最近、私たちは「脱炭素」や「カーボンニュートラル」という言葉を、日常の中で頻繁に耳にするようになりました。
一方で、「それは本当に世界の役に立っているのだろうか」「単なるスローガンで終わっていないだろうか」と、どこか距離を感じている方も少なくないのではないでしょうか。

私自身も、これまで多くの事業や投資、そして失敗と試行錯誤を重ねる中で、同じ問いを何度も自分に投げかけてきました。
環境への取り組みは、理想論だけでなく、実行され、数字として残り、未来につながらなければ意味がない。
そう強く感じています。

なぜ今、「二国間クレジット制度(JCM)」が重要なのか

2025年11月21日、公益財団法人地球環境センター(GEC)は
「令和7年度 二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業(設備補助事業)」の第三回採択案件として2件を決定したことを公表しました。

このニュースは、一見すると専門的で、限られた関係者だけの話に思えるかもしれません。
しかし私は、この制度こそが、これからの脱炭素社会における日本の「責任」と「可能性」を同時に示す重要な仕組みだと捉えています。

JCM(Joint Crediting Mechanism)は、日本が持つ技術や資金、ノウハウを活かし、
ベトナム、インドネシア、インドをはじめとするグローバルサウス諸国と協力しながら、
温室効果ガスの削減・吸収を「実際に実現し」、その成果をクレジットとして分かち合う制度です。

重要なのは、これが単なるオフセットではなく、
パリ協定6条に沿った国際的に整合性のある仕組みであり、
日本とパートナー国双方のNDC(国が定めた排出削減目標)に貢献する点です。

私がこの制度に「確かな希望」を感じる理由

私自身、これまで国内外で多くのプロジェクトに関わる中で、
「技術はあるのに届かない」「資金はあるのに使われない」という現実を何度も見てきました。

JCMは、その分断を埋める制度です。

日本企業は、自らの技術を実証し、国際市場での信頼を得る

パートナー国は、環境インフラを整備し、持続可能な発展を進める

地球規模では、確実なGHG削減・吸収が積み上がっていく

2013年のモンゴルとの署名から始まり、現在は31か国・270件以上のプロジェクトが進行中。
2030年までに累計1億トン規模の削減・吸収を目指すという目標は、決して小さな数字ではありません。

これは、「善意」ではなく、設計された仕組みとして機能している証拠です。

これからの脱炭素は「思想」と「実装」の両立が問われる

私は、脱炭素を単なる流行や義務として捉えるべきではないと考えています。
それは、次の世代にどのような社会を残すのかという、価値観の選択だからです。

同時に、思想だけでは何も変わりません。
必要なのは、

実行可能な制度

持続するビジネスモデル

数字で説明できる成果

JCMは、その三つを同時に満たそうとする、数少ない国際制度の一つです。

私たちが今、取るべき行動

これからの時代、環境分野は「誰かがやるもの」ではなく、
関わる人すべてが当事者になる領域だと私は思います。

企業として、投資家として、あるいは一人の生活者として、
「どの仕組みが本当に機能しているのか」
「どこに資金と知恵を投じるべきなのか」
を考え、対話し続けることが重要です。

JCMのような制度は、その思考の出発点になります。
私自身も、これからの事業や取り組みの中で、
実装され、検証され、未来に残る脱炭素の形を追求し続けていきます。

このテーマについて、ぜひ皆さんとも意見を交わしてみたい。
そう思えるニュースでした。

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